技術紹介

業界の課題に挑む、技術革新の軌跡

MLCC(積層セラミックコンデンサ)の製造工程で使用されるPET剥離フィルムは、表面にセラミック粉末やチタン酸バリウムなどの機能性コーティングが施されており、一般的な廃プラスチックとは異なる複雑な廃材構成を持っています。
そのため、従来は国外(特に中国本土)へ輸出され、再コーティング用途などで一部再利用される一方、輸送・輸出過程における固形廃棄物認定リスクや、廃材の最終的な処理経路が不透明であることから、MLCCメーカー各社にとって大きなコンプライアンス課題となっていました。

こうした背景を受け、セラミック付きPETフィルム廃材に特化した国内完結型のリサイクル技術を開発・導入。
独自の剥離技術、破砕・ペレット化プロセス、さらには将来の再製品化支援までを一貫して担う体制を確立し、業界の持続可能性を支える革新的なリサイクルスキームを実現しています。

セラミック除去技術 ― 非接触+物理接触のハイブリッド方式

当社が採用する除去技術の中核は、非接触の「エアナイフ」と、物理的な接触を行う「メタルナイフ」による2段階のハイブリッド剥離方式です。

  • エアナイフでは、一定圧の高速エアでフィルム表面に浮いた微粒子を吹き飛ばし、静電気による付着を抑えます。
  • メタルナイフでは、微細な物理的接触により密着した粒子や薄膜コーティングを削ぎ落とす精密処理を行います。

この2つの処理により、従来手作業や高コストでしか実現できなかったセラミック除去を自動化・連続化し、1ラインあたり毎時600kgを処理可能な実用レベルにまで引き上げています。 加えて、静電気除去装置や負圧回収システムを併設することで、除去した粉末が空気中に飛散せず、作業者や周囲環境への影響を最小限に抑えたクリーンな工程を構築しています。

自動破砕・転送・ペレット化 ― 一貫した自動制御ライン

除去後のフィルムは、PLC制御による全自動搬送・破砕システムによって、破砕→搬送→成形という工程へとスムーズに進みます。

  • 破砕機では、フィルムを一定サイズに細断。回転数や刃の形状はフィルムの厚さ・材質に応じて最適化されています。
  • 転送サイロ・定量供給装置により、破砕物は一定速度でペレット機へ送られ、必要な量だけが連続的に成形装置へ供給されます。
  • ペレット成形工程では、摩擦による熱で半可塑化された原料に水冷を加え、一定サイズのペレットに成形。シュリンク(収縮)タイプの再生ペレットが自動的に排出されます。

この一連のラインはすべて自動検知・自動制御されており、原料投入からペレット完成まで、ほとんど人の手を介さず安定運用が可能です。
また、処理中の水分量・温度・供給速度などはPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)によってリアルタイム監視され、製品の安定性と品質が維持されています。

品質管理とトレーサビリティの確保

当社では、単に廃材を処理するだけではなく、品質管理体制とトレーサビリティの確立にも注力しています。

  • 各工程で発生するデータ(温度、湿度、処理時間等)は記録され、ロット単位で追跡可能。
  • 原料供給元から最終ペレット製品までの流れを一元管理し、MLCCメーカーのCSR・ESG対応に資する透明性の高いプロセスを保証します。
  • 定期的な設備点検・校正によって、長期的な品質の安定を維持します。

こうした体制により、クライアント企業が安心して廃材処理・再資源化を委託できる体制を整えています。

今後の技術展開 ― 造粒プロセスと再製品化への進化

第1期プロジェクトではシュリンクペレットの製造を主軸としていますが、第2期ではさらなる技術深化と自動化拡張が計画されています。

  • 新たに導入予定の造粒プロセスでは、ペレットサイズ・粘度・強度をさらに安定させ、再製品化しやすい原料に進化させます。
  • また、オンライン増粘押出技術を活用することで、熱可塑性や流動性を制御し、再コーティングや押出成形などの用途にも適した素材特性を実現。

将来的には、これらの再生原料を国内メーカーへ供給し、国産原料としての地位確立を目指しています。これは単なるリサイクルではなく、循環型製造の一環としての原料供給体制を意味します。

環境貢献とCO₂削減への寄与

当社の技術は、MLCC製造企業のサステナビリティ方針に直結する形で社会に貢献しています。

  • 国内完結型リサイクル体制の構築により、海外輸送に伴うCO₂排出を削減
  • 再生材利用によって、石油由来の新素材使用量を削減
  • 廃棄物の再利用により、埋立処理・焼却処理による環境負荷を大幅に軽減

また、処理されたフィルムの用途が、PET短繊維やプラスチック鋼帯など日常的に利用される製品であることから、「身近な製品が持つ環境価値」として社会的に可視化されやすく、取引先企業の環境報告書やCSR資料にも活用いただけます。

高度技術×責任ある循環の実現へ

私たちは、「処理する」から「活かす」へと視点を転換し、リサイクル技術を通じて新たな社会価値を創出しています。 MLCC製造企業、電子部品サプライヤー、再生材需要企業の皆様とともに、持続可能な製造・調達・再資源化のエコシステムを育て、よりよい地球環境と産業未来のために挑戦を続けてまいります。